50年返済の住宅ローンは危険?若いうちに建てたい人必見!後悔しない選び方と注意点
住宅ローンの50年返済を選ぶ人が増えており、とくに20〜30代の若年層や高額な住宅を検討する方から注目を集めています。
一方で、「老後まで返済が続くのでは」といった不安の声も少なくありません。
この記事では、50年ローンのメリット・デメリットをわかりやすく解説し、後悔しないための注意点や対策も紹介します。
住宅ローンを50年返済にする人が増えている理由とは?
これまで住宅ローンの返済期間は35年が一般的だったものの、最近では「50年返済」を選ぶ人が増えてきています。
住宅価格の上昇に加え、ライフスタイルの多様化や新たなローン商品の登場といった背景もあり、50年返済が注目を集めています。
ここでは、具体的なデータや利用者の傾向をもとに、その理由を見ていきましょう。
フラット50の申込数が急増中
住宅金融支援機構が提供する「フラット50」は、最長50年の返済が可能な長期固定型の住宅ローンです。
2024年には、40年超〜50年以内の返済期間を選んだ利用者が、前年と比べて約2.6倍に増加しました。
物価や住宅価格の上昇により、月々の返済負担を抑えながら借入できる点が注目されていると考えられます。
また、「フラット50」は長期優良住宅に適用される制度のため、質の高い住まいを長く快適に暮らしたい人にも人気です。
(参考:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年10月調査)】」)
若年層・高額住宅層に人気の背景
50年返済の住宅ローンは、「今の収入では手が届かない」と感じている若い世代に、新たな選択肢をもたらしています。
月々の返済額を抑えながら、早い段階でマイホームを持てる点が大きな魅力です。
ZEH住宅や太陽光発電のような高性能住宅は建築費が高くなりがちなものの、50年返済を選ぶことで、これまで手が届かなかった住まいも現実的になります。
また、ライフスタイルに合わせて無理なく返済計画を立てられる柔軟さも、長期ローンを前向きに検討する人が増えている要因のひとつです。
「頭金がないけれど、早く家がほしい…」という方は、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】
頭金なしの住宅ローンは危険?後悔しないためのメリット・デメリットと失敗しない選び方
住宅ローンを50年返済にするメリット
「住宅ローンは返済期間が長いほど不安」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、50年ローンには、そうした不安を和らげてくれる魅力があります。
ここでは、長期返済だからこそ得られる主なメリットを3つに分けて紹介しましょう。
毎月の返済額を大きく抑えられる
50年住宅ローンの最大のメリットは、毎月の返済額を大幅に抑えられることです。
たとえば3,500万円を金利1%で借りた場合、
- 35年返済 → 月々約10万円
- 50年返済 → 月々約7万4千円
毎月約2万6千円、年間で約24万円の差になります。
この差額を教育費・生活費・貯金・家具家電の購入に充てれば、家計にゆとりが生まれるでしょう。
支出に余裕ができれば繰り上げ返済の資金も準備しやすく、老後にローンを残さないライフプランも実現できます。
若いうちからマイホームを持てる
住宅ローンを50年返済にすると、若い世代でも早いうちにマイホームを手に入れやすくなります。
借入額の目安は「年収の35%以内の返済」とされているものの、返済期間が長くなれば月々の負担が軽くなり、同じ年収でも借りられる金額が増えるというのが特徴です。
たとえば、年収450万円の場合には、以下のような違いが生まれます。
- 35年ローン:約3,370万円
- 50年ローン:約4,030万円
600万円以上の差があれば、土地付き注文住宅も視野に入れられるでしょう。
「若いうちに家を建てたい」という人にとって、50年ローンは選択肢を広げる制度です。
借入可能額は年収や返済期間によって大きく変わります。
「住宅ローンは年収の何倍まで借りられるのか?」という基準も、無理のない返済計画を立てるうえで重要な目安です。
【関連記事】
住宅ローンは年収の何倍?審査基準・返済負担率・安全な借入額の目安をわかりやすく解説!
より価値の高い住宅が選択肢に入る
返済期間が長くなると住宅にかけられる予算にも余裕が生まれ、ワンランク上の住まいづくりが実現しやすくなります。
たとえば、以下のようなグレードアップも検討可能です。
- 高断熱・高気密など、省エネ性能の高い住宅
- 家事動線に配慮した間取りや、使いやすい収納スペース
- 太陽光発電や蓄電池といった先進設備の導入
さらに立地面でも、駅に近い場所や人気のエリアなど、条件の良い土地を選びやすくなります。
このような住宅は資産価値が下がりにくく、将来の売却時にも有利に働くため、長期的に見ても賢い選択といえるでしょう。
高性能住宅には、太陽光発電や蓄電池、エコキュートなどの先進的な設備も含まれます。
それぞれの特徴や選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
【関連記事】
省エネ住宅の設備選び完全ガイド|太陽光・蓄電池・エコキュートの特徴と選び方を徹底解説
住宅ローンを50年返済にするデメリット
住宅ローンを50年返済にすると、月々の支払いが軽くなるなど多くのメリットがある一方で、返済期間が長くなることで生じるデメリットやリスクにも注意が必要です。
あらかじめ理解しておくと後悔しにくい、4つの注意点を紹介します。
総返済額が増える
50年ローンの最大のデメリットは、支払い総額が増える点です。
たとえば3,500万円を金利1%で借りた場合、
- 35年返済では約4,150万円
- 50年返済では約4,450万円
返済期間が長くなるほど利息が増えるため、差額はおよそ300万円となります。
とくに返済初期は利息の割合が大きく、元金がなかなか減らない点にも注意が必要です。
対策としては、資金に余裕があるときに繰り上げ返済を活用して早めに元金を減らすことが、済額を抑える方法があります。
定年後まで返済が続くリスク
50年返済を30歳で始めた場合、完済は80歳です。
つまり、65歳で定年を迎えたあとも、15年間ローンの支払いが続きます。
年金だけでは返済が難しくなる可能性もあり、老後の生活設計に影響を及ぼすリスクには注意が必要です。
老後の生活に負担がかかるおそれを避けるためには、繰り上げ返済を重ねて返済期間を短くするか、退職金や老後資金にローン残高分を含めておく必要があります。
ローンを定年後に残さないためにも、借入の段階から計画的に備えておくと安心です。
金利上昇の影響を受けやすい
50年という長期間の返済では、金利の変動による影響を受けやすくなる傾向があります。
変動金利型や固定期間選択型のローンを選んでいる場合、途中で金利が上がると月々の返済額も増え、家計に負担がかかる原因です。
返済期間が短いローンに比べて50年返済は金利の変動にさらされる期間が長く、影響も大きくなるでしょう。
金利上昇による負担を避けるには、将来的に金利が上がりそうなタイミングで固定金利に切り替えるか、最初から固定型の「フラット50」などを選ぶのがおすすめです。
残債割れで家を売れないリスクも
50年ローンでは、ローン残高(残債)が家の売却価格を上回る「残債割れ」が起こる可能性もあります。
たとえば、転勤や家族構成の変化で10年後に売却したくなった場合、売却価格よりローン残高のほうが多いと、差額を自己資金で補えなければ売却できません。
急な売却に備えるためには、「購入時に資産価値が下がりにくい住宅や立地を選ぶ」「繰り上げ返済で元金を早めに減らしておく」といった対策が有効です。
また、「フラット50」には、買主がローンを引き継げる「金利引継特約」という制度もあり、売却しやすいメリットもあります。
50年住宅ローンのリスクに備える4つの対策
マイホームの購入を検討する若い夫婦と家の模型
住宅ローンを50年返済にする不安や負担にどう備えるかが、後悔しない家づくりのポイントです。
ここでは、50年ローンを検討している方に知っておいてほしい、4つの具体的な対策を紹介します。
固定金利への切り替えで安定性を確保
変動金利や固定期間選択型の住宅ローンでは、将来的に金利が上昇すると返済額が増えるという可能性があります。
この不安を軽減するには、途中で固定金利に切り替える方法が有効です。
多くの金融機関では返済中の金利変更が可能で、借り換えより手続きや費用の負担も少なめとなっています。
住宅ローンを契約する際は、事前に金利タイプの変更可否を確認しておくと安心です。
フラット50で長期固定を選ぶ
金利変動の不安を避けたい方には、最長50年間金利が固定される「フラット50」がおすすめです。
2025年現在の金利は約2%とやや高めとなっているものの、月々の返済額は比較的低く抑えられます。
ただし、利用にあたっては「長期優良住宅」であることが条件です。
とはいえ、長期優良住宅の基準を満たす住宅は耐久性や省エネ性に優れており、長く快適に暮らせるという点でも大きなメリットがあります。
金利引継特約を活用して売却しやすく
家を手放す際に残債割れが不安な場合は、フラット50の「金利引継特約」の活用がおすすめです。
金利引継特約を利用すれば、ローンの借主が変わっても、同じ金利で引き継げます。
購入希望者にとっては「低金利のローンがついた家」となり、売却しやすくなる可能性が高まるでしょう。
特約を上手に活用すれば、「ローンが残っていて家を売れない」といった状況を回避しやすくなります。
繰り上げ返済で残債リスクを減らす
50年返済は資金にゆとりが生まれやすいため、繰り上げ返済で残債リスクを軽減できます。
繰り上げ返済の方法は、主に次の2つです。
- 返済期間を短縮するタイプ
- 毎月の返済額を軽減するタイプ
将来の負担をできるだけ減らしたい方には、返済期間を短縮する方法が効果的です。
元金を早めに減らしておけば、予期せぬライフイベントにも柔軟に対応しやすくなります。
住宅ローンを50年返済にする前に確認すべきポイント
50年返済の住宅ローンは、月々の返済額を抑えつつ、家づくりの選択肢を広げられる魅力的な制度です。
ただし、長期にわたる契約である以上、「借りて終わり」ではなく、将来を見据えた慎重な判断が必要となります。
ここでは、50年返済を検討する前に押さえておきたい3つのポイントを紹介しましょう。
収入やライフプランに合っているか
まず確認したいのは、現在の収入や将来のライフプランが、ローンの返済条件に合っているかどうかです。
月々の返済額が抑えられていても、50年という長い返済期間のあいだには、さまざまな変化が起こるかもしれません。
たとえば、結婚・出産・転職・子どもの進学など、人生の節目となるライフイベントは避けられないでしょう。
働き方が変わったり、収入が不安定になったりした場合でも返済を続けられるかを見越しておくことが大切です。
「無理なく返せる金額か」「家計に負担がかからないか」を事前にシミュレーションし、現実的な予算かどうかを慎重に見極めましょう。
理想の家づくりを実現するには、最初の予算管理が非常に重要です。
よくある予算オーバーの原因とその対策について、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
【関連記事】
家づくりで予算オーバーする5つの原因とは?失敗しないための対策と費用を抑えるコツ
転勤・住み替えの可能性も視野に入れる
50年の間に、 転勤や親の介護、子どもの進学、実家へのUターンなどで住み替えが必要になる可能性は十分にあります。
いざという時に困らないよう、将来的な住み替えも視野に入れた計画を立てておきましょう。
具体的な対策として、以下のような方法が挙げられます。
- 資産価値が下がりにくい立地や性能の住宅を選ぶ
- 繰り上げ返済で残高を早めに減らしておく
- 金利引継特約などの制度を上手に活用する
マイホーム購入の際は、途中で家を手放すことになっても「残債割れ」の状態にならないようにしておくと安心です。
長期的な返済計画を立てることが重要
50年返済を選ぶなら、老後まで見据えた資金管理が欠かせません。
たとえば、以下のような備えを考えておくことが大切です。
- 退職金や年金で完済できるように計算しておく
- 子育てが一段落したタイミングで繰り上げ返済を行う
- 医療費や介護費の増加を見越して老後資金を確保する
住宅ローンを「人生設計の一部」としてとらえ、「あのとき、もっとしっかり考えておけばよかった」と後悔しないためにも、50年という長期にふさわしい計画性を持つことが大切です。
まとめ|50年返済は計画的に活用すればメリット大
50年返済の住宅ローンは、若いうちに家を持ちたい人や月々の支払いを抑えたい人にとって魅力的な選択肢です。
一方で、総返済額の増加や老後の返済リスクなど注意点もあります。
後悔しないためには、繰り上げ返済や固定金利の活用、将来を見据えた計画が重要です。「長く借りること」ではなく「どう暮らすか」を意識し、ご自身に合った選択をしましょう。